化学物質規制変更の情報収集をどうすべきか?
グローバル市場における化学物質規制の強化と頻繁な改定により、製造業のコンプライアンス管理と製品戦略が根本的な転換期を迎えています。2024年には、EU REACHのSVHC(高懸念物質)候補リスト更新(1月に5物質、6月に1物質追加)や、米国TSCAの新規化学物質手続に関する最終規則の公表(12月18日)など、主要制度で重要な動きが相次ぎました。
EU REACHの執行は加盟各国の権限で行われ、罰則水準も各国が「効果的・比例的・抑止的」であるように設定します。すなわちEU全体で一律の罰金率や統計は定められておらず、不適合は各国当局の執行(共同取締りやREFプロジェクト等)の対象となります。
監視すべき化学物質規制の類型と特徴
EU REACH規則(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)
SVHC(高懸念物質)リストの定期更新
SVHC候補リストは概ね年2回(近年は1月・6月)更新され、2024年は1月に5物質、6月に1物質が追加されました。SVHCに指定された物質は、成形品中の含有濃度が0.1重量%を超える場合にサプライチェーンでの情報伝達義務(REACH第33条)が生じ、消費者からの請求には45日以内に情報提供が必要です。また、当該成形品を年間1トン超取り扱い、かつ候補収載後は6か月以内にECHAへの届出義務(第7条第2項)が課されます(ばく露が排除できる場合等の例外あり)。
制限物質(Restriction)リストの段階的強化
REACH附属書XVIIのEntry 78(いわゆる「マイクロプラスチック規制」)は2023年10月17日から段階的に適用が始まり、用途ごとに移行期間が設けられています(化粧品・洗剤・肥料・香料カプセル化・医療機器等)。
RoHS指令(Restriction of Hazardous Substances Directive)
適用除外措置の段階的廃止
RoHSの適用除外は用途・カテゴリごとに期限が設定され、2024年7月21日には主にカテゴリ9(産業用監視・制御機器)とカテゴリ11に関する複数の除外の期限が到来しました。中国RoHS・韓国RoHSとの規制ハーモナイゼーション
アジア太平洋地域では、中国RoHS 2.0(電器電子産品有害物質使用制限管理弁法)と韓国K-RoHSの規制内容が、EU RoHSとの整合性を高める方向で改定されています。中国では、標識規格SJ/T 11364-2024が2025年4月1日施行となり表示要件が更新。さらにGB/T 26572-2011/XG1-2024(2011年版の第1次改正)が2026年1月1日施行でフタル酸エステル類等の追加が告示されています。加えて、強制国家標準のGB 26572-2025が2027年8月1日施行として公布され、濃度限度(旧GB/T 26572)と表示(SJ/T 11364)を統合する位置づけです。韓国では、2024年9月25日にK-RoHS(資源循環法)関連の施行令・施行規則改正案が公表され、対象EEEの拡大等によりEU動向を踏まえた整合化が進んでいます。
米国TSCA(Toxic Substances Control Act)
新規化学物質の事前審査
EPAは2024年12月18日に新規化学物質の手続規則の最終版を公表しました。TSCA第5条に基づくPMNは原則製造・輸入の少なくとも90日前に提出が必要で、審査は原則90日、必要に応じ最大90日延長が可能です(審査過程での時計停止(サスペンド)や追加情報要求が生じる場合があります)。優先評価化学物質の段階的規制
2024年12月17日にはトリクロロエチレン(TCE)の最終リスク管理規則が公表され、ドライクリーニングや金属脱脂等の用途で段階的な使用禁止が定められました(最終規則は2025年に一部施行時期調整の告示あり)。
日本化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)
優先評価化学物質のリスク評価推進
日本では、優先評価化学物質の指定・評価が継続的に進められています。最新の指定や評価の運用は各省庁告示や審議会資料で更新されます。少量新規化学物質確認制度
年間製造・輸入量1トン以下の少量新規化学物質については、従来どおり事前の「申出」による確認制度が適用されます(事後報告への制度移行は公表されていません)。年度ごとの受付スケジュール等は経産省が案内しています。
業界別の化学物質規制変更情報活用シナリオ
電子機器・半導体メーカーの法務・品質保証部門
Apple、Samsung、ソニーなどの大手電子機器メーカーでは、数万点に及ぶ部品・材料について、含有化学物質の継続的な監視が不可欠です。新たにSVHCに追加された物質を含む部品がある場合、REACHのECHA届出(該当時)やサプライチェーン情報伝達に速やかに対応し、代替設計・代替部材採用の計画を前倒しで進めることが求められます(候補収載後6か月以内のECHA届出義務に同期させる運用が実務上有効)。
規制変更の早期把握により、サプライヤーとの代替技術開発スケジュール調整と、製品設計変更に伴う追加開発費用の予算確保を実現します。特に、新製品の市場投入予定が規制適用日に近接している場合、対応の遅れは製品ローンチ延期と売上機会の逸失につながるため、迅速な情報収集が競争優位の源泉となります。
自動車メーカーの調達・サステナビリティ部門
トヨタ、フォルクスワーゲン、GMなどでは、EU ELV指令やREACH規則の改定により新たに規制対象となる物質への対応が重要です。Tier1・Tier2サプライヤーと連携し、代替材料の選定と承認サイクルを前倒しで運用することで、規制適用後の調達リスク回避と品質維持を両立できます。
化学・医薬品メーカーの薬事・規制対応部門
REACH認可対象物質に指定された中間体や添加剤が関係する場合、代替物質の検討に加え、承認の一部変更の必要性等を早期に評価し、非臨床試験や安定性試験の計画を練ることで、市場供給リスクを最小化できます。
商社・化学品流通業者の貿易・物流部門
米国向けでは、TSCA新規化学物質のPMN提出は製造・輸入の少なくとも90日前が必要で、EPAによる最大90日延長や時計停止等で審査期間が伸びることがあります。通関・納期計画では、90日を超える審査延長リスクも見込んだバッファ設計が実務的です。
化学物質規制変更情報の主要収集源
EU ECHA(欧州化学機関)
REACH・CLP・殺生物剤規則の運用機関として、SVHCの意図(Registry of Intentions)や制限提案、評価・規制ニーズの検討状況(PACT)が公開されています。とりわけPACTは48時間ごとに更新され、当局の活動の見通し把握に有用です。米国EPA(環境保護庁)
TSCA新規化学物質審査のプロセスやSNURの告示・最終化、リスク管理規則(例:TCE)などが連邦官報・EPA公式サイトで公表されます。日本厚生労働省・経済産業省・環境省
化審法の運用、優先評価化学物質の指定や各種手続(少量新規等)の案内が公開され、受付スケジュール等も定期更新されます。
従来の情報収集手法における課題と限界
規制の技術的複雑性による理解困難
化学物質規制は、物質の同定・分類、用途別の適用除外、段階的実施スケジュール、サプライチェーン義務など、高度に技術的な要素が複合的に組み合わされています。例えば、「REACH第33条に基づくSVHC含有情報の伝達義務における成形品中の意図的添加物質の判定基準」といった規制内容を正確に理解し、自社製品への影響を評価するには、化学・法務・品質管理の複合的な専門性が必要となります。
地域別規制の相互影響の把握困難
グローバルに事業展開する企業では、EU、米国、中国、日本など、複数の規制が並行して適用されるため、規制間の相互作用を総合的に評価する必要があります。特に、同一化学物質でも地域により規制内容・適用時期が異なるため、地域別の対応優先度の判断と、グローバル統一基準の策定が複雑化しています。
規制変更の影響波及範囲予測の複雑性
単一の規制変更でも、直接対象となる化学物質だけでなく、代替物質の需給、サプライチェーンの調達コスト、競合他社の開発・上市計画など、広範囲に影響が波及します。これらを事前に評価し、最適な対応戦略を立てるには、従来の情報収集手法では限界があります。
AIを活用した次世代情報収集の実現
従来の人力による情報収集の限界を根本的に解決するため、AI技術を活用した包括的な情報収集ソリューションの導入が急速に進んでいます。
株式会社リバースタジオが提供する情報収集サービスStationは、業務プロセスに合わせて、あらゆる情報やデータをAIにより収集・活用する次世代のRSSです。オンラインに存在するあらゆるデータや情報を収集・処理し、化学物質規制の変更情報を包括的かつ効率的に収集します。
高品質・効率的な規制変更情報の提供
EU ECHA、米国EPA、日本厚生労働省の政策文書、業界団体の分析レポート、国際機関の基準改定情報など、化学物質規制に関連するあらゆる情報をニーズに合わせて提供します。従来のRSSや検索と比較して、圧倒的に高品質で効率的な情報収集を実現し、政府審議会の議事録や専門機関の技術文書まで包括的に監視します。面倒なキーワード設定や情報フィルタリングが不要
「化学物質規制」というキーワードを起点に、「REACH」「RoHS」「TSCA」「化審法」などの関連用語はもちろん、「SVHC」や「制限物質」「認可対象物質」などの専門用語を発見し、法務・コンプライアンス管理に関連する幅広い規制変更情報を漏れなく収集します。あらゆる情報源からの包括的収集
既存サービスでは対応できない、各国規制当局、業界団体、専門機関など、オンラインに存在するあらゆる情報を収集可能です。多言語対応により、英語・ドイツ語・フランス語・中国語等の海外規制機関発表も確実に把握できます。ニーズに応じた柔軟な出力形式
収集した規制変更情報は、ニーズや用途に合わせて最適な形式で出力できます。規制対象物質はテーブル形式、重要な規制変更は要約表示とポイント構造化、施行スケジュールはガントチャート形式、システム連携用はCSVなど、業務プロセスに応じた柔軟な対応が可能です。
さらに、要件定義から活用までを伴走するコンサルティングサービスにより、企業のコンプライアンス戦略に基づいた監視対象の定義と情報活用方法の最適化をサポートします。既存の化学物質管理システムやPLMツールとのAPI連携により、規制変更情報の収集から製品設計・調達判断への反映まで一貫したワークフローを構築し、迅速な意思決定と事業継続性の確保を実現します。
まとめ
化学物質規制の変更情報を迅速かつ正確に把握することは、グローバル市場における事業継続と競争優位の確保において不可欠な要素となっています。数多い規制変更の中から、製品戦略とコンプライアンス管理に影響する重要な情報を効率的に抽出し、適切な対応策を迅速に実施することが、化学物質規制の強化時代における企業成功の鍵となります。
従来の人力による情報収集から、AI技術を活用した自動化ソリューションへの移行は、単なる業務効率化にとどまらず、規制リスクの早期回避と市場機会の創出を同時に実現します。情報収集の高度化をお考えの際は、ぜひStationの活用をご検討ください。
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